カグベニでの楽しいひととき(再掲)
かつて泊まったロッジを捜すが、名前を覚えていない。村の様子や景色で捜してみたが、やはりどこであったか全く分からない。仕方なく、道中の大きな石にペイントで宣伝していた「ニュー・アンナプルナ・ロッジ」というところへ。
中へ入って驚いた!2階客室への階段、屋上テラスへの出口、カギ形に配置されているベッドルーム・・・、7年半前(’84年秋)に泊まったロッジだ!!思わず声高に叫んでしまった。「同じロッジだ!」と。
ベッドルームや廊下を掃除していた娘さんがベッドルームへと案内し、彼女に「7年半前に、ここへ泊まったことがあるよ」と言うと、たいそう驚いていた。「本当なの?」と。俺は「本当だよ。ほら、あそこにある黒いカーテンを出ると、テラスになっていて、カリガンダキ川がローマンタンの方へ流れているのが見えるでしょ?」と、7年半前の記憶を話した。娘さんは「イエス」と言い、それが事実であるだけに、俺が以前にもこのロッジへ来たことがあるということを、直ちに信用し喜んでくれた。そして「でも、ごめんなさい!私はそのころ、まだ小さかったから、あなたのこと覚えていないの」と、話した。そりゃ無理もない。7年半前、ほんの一泊しただけの俺を、覚えているはずがない。
ベッドルームにはベッドシーツも枕カバーも備えてある。今までのところにはなかったことだ。このことも話すと、彼女はややはにかみながらも自慢げに「イエス」と答えた。ダイニングルームも、各テーブルにテーブルクロスをかけ花を飾り、電気も灯りシャワーも完備している。7年半の歳月は、村もロッジも大きく変える。
昼食前に、娘さんとしばらく話をする。彼女に、「カンニ(仏塔門)や郵便局は、以前来た時はなかったよ」と話すと、彼女も「えぇ、その頃はなかったワ!」とうなづき、さらに「電気は、いつ通ったの?」と尋ねると、「2年ぐらい前かしら・・・」と話していた。
昼食は、ベジ・フライドライスにする。しばらくすると、アメリカ人グループもここへ。そして、ノルウェーの女の子たちも。彼女たちは、ロッジに入って来るやいなや俺を見つけ、「ジン!」と言って俺のテーブルへと駆け寄り、相席して昼食を共にした。彼女たちにはずいぶん信頼されているみたいだ。俺としても、まんざらではない。こんな可愛い女の子たちに信頼され親しくしてもらって、嬉しいに決まっている。彼女たちもここへ泊まろうとしたのだが、あいにくすでに満室になってしまったため、泊まることはできなかった。
一休みした後、村の中を散策。まるで『迷路』のようだ。カリガンダキ川のほとりでアンモナイトの化石を探すが、なかなか見つからない。あきらめて帰る途中のガレ場で、あまり良質ではないが、アンモナイトのかけらを拾った。それだけでも満足だ。夕方、ロッジへ戻りアメリカ人グループやガイドにそう言って見せると、皆信じられないように、「ラッキーじゃないか!」と言っていた。
カリガンダキ川の上流を望む。この先はムスタン王国(半独立の特別自治国)、さらにチベット・・・。
カグベニの村にて。石を平ぺったく削り積み上げたのでしょうか・・・。
石門をくぐると・・・、このようになっていました。ここにも、人々の暮らしがあるようです。
夕食までの時間を「ナマステ!オォ、ダイニングルーム ジャロツァ タラ ヤハン デレィ ガラミツァ (こんにちは!おぉ、ダイニングルームは寒いけど、ここはとても暖かいねぇ)」と、ネパール語で言いながらキッチンへお邪魔すると、すぐに椅子を用意して、「ストゥンノス(お座りなさい)」と勧めてくれた。英語とネパール語、そしてボディランゲージを交えながら、ロッジの人たちと言葉を交わす。ロッジのオーナーの「タパイィ ジャパニ? (あなたは日本人?)」に始まり、色々な質問をされる。日本での職業と給料、年齢、結婚しているのか・・・etc。でもさすがに、これらの質問にもそろそろ慣れてきた。いつも訊かれるからなぁ!
ラジオから『レッソン・フィリリ』の歌が流れ、娘さんがそれに合わせ、陽気に歌っている。俺も同調し一緒に合わせて歌うと、皆ビックリしている。ロッジのオヤジさんは、俺が『レッソン・フィリリ』を歌ったことが嬉しくて仕方がないようで、チャン(ネパール風ビール)をご馳走してくれた。そのお礼に『パンコ・パト』を歌うと、みな大喜びだ。ロッジのお母さんは「日本人が”パンコ・パト”歌ってる」と笑顔で話しているし、オヤジさんは、さらにチャンを勧める。アメリカ人グループのガイドのラジも「なぁんだ、ここにいたのか?」と言って、会話に加わる。こうして、楽しく愉快に時を過ごす。
時間もずい分過ぎて、「マ カナ カナ マンラギョ (私はご飯が食べたい;腹減った―!)」とネパール語で言うと、ロッジの人たちは皆、大爆笑!まさか、ネパール語でそう言うとは思ってもいなかったのだろう。お母さんは、もう笑いが止まらない!娘さんは「今ちょうど作っているところだから、もう少し待ってて・・・。」と、笑いながら答える。
この日の夕食は、ダルバート。アップルワインも飲んだのだが、これはキツイ!チャンもずい分飲ませて頂いて、最高の気分で、床に就く。
ダルバートとアップルワインでディナー!ヘヘッ!嬉しそうでしょ?
カグベニ、ニューアンナプルナロッジにて
*この旅日記は1992年のものです。
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