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2012年6月16日 (土)

雨の記憶

 皆様、おはこんにちばんは (◎´∀`)ノ

梅雨ですね。ジメジメとした憂鬱な季節です。
この地方も昨夜から降り始め、今日一日降っていました。先週、梅雨入りしたのですが何かいつも「梅雨の中休み」って・・・(゚_。)(。_゚)?
そんな季節ですが、若かりし学生時代...まだ10代だった頃ですが、今も覚えている素敵な夜がありました。
この夜の出来事は、かつて所属していた同人誌にも紹介しました。その同人誌を本棚の奥から見つけ出し、紹介します。

               雨の記憶

毎年、梅雨のころになると思い出すことがある。
小雨降る中、辛い重荷を心に背負って、家路についた夜のことを。

 あれは大学1年の時。とある文化サークルに所属し毎日楽しい日々を送りながらも、時として色々な問題にぶつかり、悩み、落ち込んでいたりもした。

そんなある日、いつも通りサークルの仲間たちと一緒に帰るのだが、私のあまりの落ち込み様に、誰もが声をかけることすらできない。ただ時折、心配そうにこちらをうかがっているだけ。というより、その時の私が誰一人として、人を寄せつけない、そんな雰囲気だったらしい。

仲間たちとはターミナル駅で別れ、私は一人、乗り換え駅でバスに乗る。やがてバスは、私の街までやって来た。

何人かの乗客がバスを降りる。降りた途端皆、傘を広げる。私も傘を持っていたが、濡れて帰りたい気分で、雨の中をトボトボと歩きだした。その時のこと・・・。

「同じ方向なら、入って行かない?」

と突然、声をかけられた。私は一瞬驚いた。

「アッ、いえ・・・、傘は持ってるんですけど、何となく出すのが面倒で・・・」

声をかけてくれたのは、見知らぬ女性、若いOL風の人だった。彼女は私の答えに

「なんて怠慢な・・・」と言って、笑った。

彼女は私を傘に入れて、こう続けた。

「バスの中でさぁ、すごく深刻な顔してたでしょ?ものすごく気になってたんだヨ~!
 そしたら同じバス停で降りて、同じ方向へ歩いて行くんだもん。それも傘もささずに・・・!学生さん?」

私は本当に驚いた。見ず知らずの女性が傘をさしのべてくれたことにではなく、まるで私の心の内を見すかされたことに、私は驚いた。

「えぇ、そうです。サークルで色々とあって、何となく濡れたい気分だったんです」

「ふ~ん、そうかぁ!若いうちは色々なことがあるし、そんな気分の時もあるよネ!」

彼女は明るく笑いながら、話をしていた。
別れ際、彼女は、

「私は、もうすぐそこだから・・・。ここから先は、ちゃんと自分の傘をさしなさいよ、ネ!もし面倒なら、私の傘を持って行っていいワヨ!」

私はさすがに自分の傘を出した。

「アリガトウ!お休みなさい」と言うと、

「お休みぃ~!元気出してネ!」と、答えてくれた。

私の心は晴れ晴れとしてきた。同じ仲間たちが、どうすることもできないほど落ち込んでいた私を、たまたま同じバスに乗り合わせ、たまたま同じ住宅内に住んでいる見ず知らずの女性が、私を気遣い勇気づけてくれた。

「こんなこともあるんだな!悩んでるのがバカらしくなってきたな!」

私は翌日、落ち込んでいたのがウソのように元気に大学へ行った。

 あれからもう30年以上の歳月が流れました。当時、若干18才。青春の真っただ中。
けれど、この雨の夜、落ち込みきって、雨に濡れて帰ろうとした夜のほんの4~5分の出来事、たかが4~5分だからこそ、映画の1シーンのように今でもはっきり覚えています。
 そう、話の内容、彼女に言われたことさえも、今も脳裏にこびりついています。
それほど印象的な『雨の夜』でした。

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コメント

素晴らしい方に出会いましたね。
私はきっと誰の顔も見ていません。いつも思うのですが、何を着ていたとかどんな髪型だったとかもさっぱり見ていない自分に呆れます。見ず知らずの他人の表情まで気にかけるってよほどのことでない限りできませんね。


agewisdomさんへ

声をかけられた時はビックリし、それまで自分の心の奥深くに気持ちが行っていたのが、不意に我に返ったような瞬間でした。
だからと言って、簡単に声かけることは、なかなかできないですよね。きっとこの女性、声かけることにとても勇気を出したのでは?と思います。
ただ一つ残念だったのは、私がずっとうつむきがちで、その上雨の夜でしたので、その女性の顔をほとんど見ていなかったのです。
この日のお礼を、「おかげさまで元気になれました」と伝えたかったのですが、それが出来なかったことが心残りでした。

投稿: agewisdom | 2012年6月16日 (土) 21時50分

慕辺未行さん  こんばんは
梅雨ですね。こちらも一日中雨でした。
雨は気分が滅入り、あまり好きでは有りません。
雨の日の素敵な思い出がお有りなのですね。
落ち込んだ時に、雨に濡れて歩きたい気持ちもわかります。
でも雨に濡れて自宅までお戻りだったら
もっと気分が落ち込んだかもです。
その日の慕辺未行さんは、声をかけたくなるような・・・
お声をかけて下さった女性の方、素晴らしいですね。
こんなに素敵な思い出が有れば
雨の日も好きに成れそうです。


すみれさんへ

梅雨入りしてからいつも『梅雨の中休み』の日々でしたが、今日は一日中降っていました。
このノスタルジック・エッセイ、私自身に起こった本当に印象的な出来事で、この季節の雨の夜、気分が滅入っているときはなおさら思い出す出来事です。
大学から名古屋駅まではサークルの仲間たちと一緒だったのですが、当時のサークル仲間は「誰一人として声をかけられる雰囲気ではなかった」ほど、近づけなかったそうです。
それなのに、声をかけ傘に入れてくれた見知らぬ女性・・・、「気になってたんだよ」と言っても、声かけるには少し勇気がいると思います。
それだけに本当に嬉しかったです。
もしそのまま濡れたまま帰っていたら・・・?!どうなっていたでしょうね?
「こんなことが起こるなんて・・・」と、本当に悩んでいるのがバカらしくなったこと、今もはっきり覚えています。
翌日、サークルの仲間たちは前夜の様子とのギャップに皆「???」という顔をしていました。

投稿: すみれ | 2012年6月16日 (土) 22時27分

なんて素敵な、雨の晩の出来事でしょう。
これが、この前お話ししてくれた「雨の日の思い出」でしょうか・・・
偶然のようでありながら、その時、神様が、出会うべくして
出会わせてくれた女性だったのかもしれませんね。
そして、こんなふうにさりげなく人を元気にすることが
できる人になりたいと、心から思いました。
慕辺未行さんの文章がとてもお上手で、その晩の光景が
ありありと目の前に浮かんでくるようでした。


hananoさんへ

ハイ!先日のhananoさんのブログを拝見し、思い出した出来事です。
良かった (^_^)!hananoさんにぜひ、読んでいただきたかったので (^_^;;!
この時はまだジャズにのめり込んでいなかったのですが、もし知っていたら気持ちは”ジーン・ケリー”と同じように、雨の中で歌い踊っていたかもしれません。
ところが残念なことに、落ち込んで俯いていたのと、雨の夜で暗かったせいで、その女性の顔はほとんど見ていなくて、後日改めてお礼を言いたくても言えなかったことが、心残りでした。
この翌日、サークル仲間たちが前夜との違いに皆「???」だったことは言うまでもありません。そしてこの出来事を話すと誰もが「へぇ~っ!そんなことがあったんだぁ!」と感心していたこと、今も覚えています。
この時の光景、浮かんでくるようでしたか?これ、私にとって『最高の褒め言葉』です。ありがとうございました。

投稿: hanano | 2012年6月16日 (土) 22時51分

雨の日にすてきな思い出があったのですね。
ナイーブだったのですね。
今も充分にナイーブなのですが・・・

こちらからお礼を言わなくても
その後のお元気な姿を見た彼女は
陰で安心されていたことでしょう。
元気になれてよかったですね


matsubaraさんへ

当時、サークルの1回生の中ではリーダー的存在で、すべてに一生懸命取り組んでいたせいか、落ち込みも激しかったのかもしれません。
翌日サークルの仲間に「半径1m以内に近づけない雰囲気だった」と言われた覚えがあります。
同じバスを利用していましたから、それ以降も同じバスに乗り合わせたことはあったかもしれないですね。
このような出来事で元気になれたのですから、逆に言えば根が”単純”だったのも・・・(^_^;;

投稿: matsubara | 2012年6月17日 (日) 07時22分

慕辺未行さんへ
お早うございます
ドラマの一場面を見る思いですね
若い女性の顔を覚えていない(と言うよりも
顔を見ていない) 余程精神的に参っておられた
ためでしょうね それと未だ10代だったために
異性に対する想いが淡白だったこともあるのでしょうね
この間からの海外旅日記を読ませて頂いていても
慕辺未行さんの異性に対する想いが淡白だなあと
感じていました
それにしても慕辺未行さんの文才には驚きです
同人誌云々とありますが そう言う世界にも入って
おられたのでしょうか
雨の記憶 このタイトルも素敵ですね
何回も読み返えさせて頂きました


古都人さんへ

私自身の中では、まさに”ドラマの1シーン”のように覚えている出来事です。
同じサークルの仲間たちでさえ、地下鉄の中で声をかけることさえできないほどの落ち込み様だったのです。
にもかかわらず、声かけられたのですから、本当に驚きました。その女性も、声かけるにはちょっと勇気が要ったのでは?と思います。
女性に対して淡白・・・だったのかなぁ (-_-)ウーン...?高校時代から告白してはふられる・・・の繰り返しでした (^_^;;
ユースホステルを利用しての旅が多く、女性の旅仲間も多かったこともあり、『恋にならない友情』のようなものはかなりありましたから。
文才、ありますか?フィクションではなくノンフィクションですので、起こったことをありのまま書いただけのことなのです。
同人誌は、旅好きな仲間同士のサークルの会誌で、そこに旅とは違いますが”ノスタルジック・エッセイ”として寄稿したものです。反応は・・・、全くありませんでした (^_^;;
それだけに今回の皆様の反応、とても嬉しいです。

投稿: 古都人 | 2012年6月17日 (日) 09時03分

慕辺未行さん
おはようございます(^・^)
朝からお訪ねして、再度お訪ねしています
情景を思い描きながら
少し胸を熱くして拝見しました

「心を言葉にする」はとても難しいですが
慕辺未行さんは文才がお有ですね
何時もそう思って拝見しています。
 
心に残る思い出は少ないものです
いつしか薄れてゆく、忘れるものが多いです
こんなに優しくて素敵な思い出を残してくださった方
今も素晴らしい女性、
素敵なお母さまでしようね

慕辺未行さんのお母さまはお変わりありませんか?


mutumi okabeさんへ

たびたびの訪問、そしてコメントありがとうございます。
お身体の方、いかがですか?無理なさらない程度に訪問して下さればいいですよ。
本当に今も心に残る印象的な夜でした。
その日もしサークルで、何の問題もなく帰ってきたら、決して起こらなかった出来事でしょう。深く落ち込んでいたことに、”感謝”かも・・・?!
ブログのタイトルの下に、”文章で綴る心のアルバム。写真だけでは忘れてしまう、大切な想い出”というフレーズを書いていますが、この夜の出来事も同人誌に寄稿して残っているからこそ、今も新鮮に思い出すことができます。
文才・・・ねぇ...(-_-)ウーン...自分自身の体験をそのまま書き残してあっただけですから・・・(^_^;;
私より少しだけ年上の女性だろうと思いますので、今は素敵なお母さん、いやお孫さんがいるかも・・・?!
母は、今日の夕食時、訳が分からないことを言いだし、驚くやらあきれるやら・・・精神的に疲れます。

投稿: mutumi okabe | 2012年6月17日 (日) 10時38分

こんばんは。
まるでドラマのようなワンシーン。
そんなことってあるんですね。
見ず知らずの人から声をかけられるほど
ですから、よほどの落ち込みようだったの
でしょうけど、ちゃんと救いの手も差し伸べられて。

絶対に忘れられない出来事ですね。


Junjiroさんへ

ホント、そうなのですヨ (^_^)!
私の心の中では、ドラマの名場面の如く残っています。でもそれも、かつてこの出来事を文章にし、サークルの会誌に寄稿したからこそ、より鮮明に記憶に残ることになったのかもしれません。
全く見ず知らずだったからこそ、声かけられたのかもしれないですね。同じサークル仲間たちは、声かけるどころか私に近づきがたいほどの雰囲気だったそうですから。
もしJunjiroさんもこのような体験をしたとしたら・・・、やはり元気になりますか?男ってけっこう単純ですよね?!

投稿: Junjiro | 2012年6月17日 (日) 20時54分

心温まるお話、ありがとうございますconfident
子どもに対してでさえ、なかなか声がかけられないこの頃
ましてや自分より少し若いくらいの大学生になんて・・・本当に勇気が必要だったと思いますup
おまけに、よっぽど放っておけない雰囲気でいらっしゃったのですね
こないだこんな言葉を聞きました
「大人は子どもの続きなんです。自分の昔を思い出して。」
悩んだり苦しんだり・・・みんなが歩む道ですよね
こんな風にそっと手を差し伸べられたら、素敵なんですけどshine
難しいです~coldsweats01


きゃぶさんへ

ハイ、本当に「放っておけない」様子だったそうです。
ただでさえすごく深刻な顔していたのに、誰もが傘をさすほどの雨の中、傘もささずに帰るものですから!
それでもやはり声かけるには、”勇気”が要ったと思います。
この話は1980年の時ですから、今の社会とはずいぶん違うと思います。
今の時代、女性はまだしても男は、困っている人や子供を見ても、なかなか声をかけ辛いものです。まかり間違えば”変質者”扱いされるかもしれません (>_<) 。
声をかけるにしても、相手の考え方次第で両極端に受け止められるのが怖いですよね。

投稿: きゃぶ | 2012年6月19日 (火) 22時57分

今週は記事はお休みのようですね~
毎日掲載の方は付いていくのがやっとなので、 のんびり記事をだして
いただくと 個人的にはほっとします~~

皆様が書いておられるように 私が何も申し上げることがないほど
素敵な文章です・・   多分ちょっと年上の女性だったでしょう
その方には 弟さんがいらしたかも・・
今度は雨の夜、ジンさんが 女性に声をかけてみて下さいね! 


bellaさんへ

先週で再掲載記事が終了しまして、今週は普通にブログ更新するつもりが、なかなか時間が取れず滞っています (^_^;;
他の旅日記も再掲載しようかどうか、ちょっと迷っています。
この記事も海外の旅日記同様、我が体験談をありのまま書いているだけですので、お褒め頂くのが恐縮なほどです。
なるほど~!その方に弟さんがいて、それで何なとなく放っておけない感じに受け止められたのかもしれませんね。
私が声を・・・ですか?! (^_^;;アセッ
変質者か痴漢と間違われそうですので、止めておきます。(笑)

投稿: bella | 2012年6月22日 (金) 17時01分

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