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2009年10月11日 (日)

黄泉比良坂(よもつひらさか)

『天地の始めのとき、高天原(たかまがはら)に三柱(みはしら)の神々が生まれました。天と地が渾沌としていて、区別のつかない世界を、三柱の神によってずいぶん区別がつくようになりました。そこへ二柱の神が生まれ、世界は明るさを増し天と地が形づくられていったころ、互いに誘いあった二柱の神が新たに生まれました。男神の名は伊邪那岐命(イザナギノミコト)、女神の名は伊邪那美命(イザナミノミコト)であります。

新たに生まれたこの二柱の神により、島々がつくられ大八島(おおやしま)国がつくられました。さらにほかの島を生み、家、川、山、船、食物の神々など、多くの神々を生み続けました。しかし、最後に火の神を生んだため、御陰(みほと)を焼かれ病気になり、とうとうお亡くなりになり、死者が住むという黄泉(よみ)の国へと旅立っていかれました。

伊邪那岐命は伊邪那美命が忘れられず、黄泉の国へと向かいました。そして「愛しい我が妻よ。君と私とで作った国はまだ全部作り終えていない。もう一度帰って来てくれ」と言いました。しかし、伊邪那美命は「あなたが早く来てくださらないから、私はもう黄泉の国の食べ物を食べてしまいました。でも、あなたがここまで来てくださったのだから、黄泉の国の神様に相談してみます。でもその間、決して私の姿をご覧にならないでください」と答えました。

長い間待たされ、とうとう我慢しきれず伊邪那岐命は、中へ入ってしまい、そこで伊邪那美命のおぞましい姿を見てしまいました。すると伊邪那美命は「あれほど見ないで下さいと言ったのに。私によくも恥をかかせましたね。許せません」と、黄泉醜女(よもつしこめ)に命じ後を追わせました。

伊邪那岐命は追ってくる黄泉醜女からひたすら逃げました。伊邪那美命はさらに大勢の軍勢をつけて追わせました。伊邪那岐命は腰の長剣を抜いて、それを後ろ手に振りながら逃げました。とうとう現世(うつしよ)と黄泉の国の境の黄泉比良坂(よもつひらさか)までたどり着くと、そこに桃の木がありました。その桃の実をもいで雷神たちを撃つと、みな退散しました。

そこへついに伊邪那美命自身が追いかけてきました。坂を登ればもう現世です。伊邪那岐命は千引き(ちびき)の岩で黄泉比良坂の道を塞ぎました。黄泉比良坂は、現在の出雲の伊賦夜坂(いふやざか)だと云われています。』 *古事記より引用・要約

この話は、古事記の冒頭を要約したものです。20代後半、個人でしがない仕事をしていた私は、ある会社の依頼を受け島根県東出雲町へと車を走らせました。
荷物の届け先の住所は、「東出雲町揖屋(いや)」とありました。手元にあった「毎日グラフ別冊・古事記」の中に載っていた「揖屋神社」があるところです。
私はプライベートでもなかなか行くことができないところだけに、この仕事をとても楽しみにしていました。

指定された期日の朝に荷物を受け取ったのでは、「事故や工事渋滞などで間に合わないといけない」から、前日夕方に荷物を受け取り、カメラ持参で1泊2日の仕事兼旅行へ出かけました。依頼主である会社の担当者も、以前いただいた仕事の評判・実績を知っているので、私が行くことに対してとても安心し、私が「泊まりがけで、ついでに旅を楽しんできます」と言うと、「カメラは持ってきてますか?」と、ニコニコしながら和やかに話していました。
荷物を受け取り、いったん自宅で夕食をとり、夜の高速を西へと走りました。夜7時に出発し中国道・大佐 I.Cに着いたのは、真夜中0時ごろ。この日はここで仮眠し、翌朝6時、起床し目的地へと向かいました。日本海側へ向かう道の途中にある峠では、雲が低くたちこめ、下界が全く見えず、「雲上にいる」と感じさせられました。峠を下ると、雲の中。そこを抜けると下界が見えてきました。
届け先は事前に調べておいたところ、「揖屋」という駅があり、「その近くだろう」と思った私は、東出雲町に入り、国道9号線から駅方面への旧道を走りました。すると、目についたのは「揖屋神社」。その横を通り過ぎ、駅から電話をし届け先の場所を尋ね、8時半に荷物を無事届け、仕事を終えた後、この「揖屋神社」を訪れました。

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揖屋神社です。とても歴史のある神社でした。

本殿はとても立派な神社です。社務所を訪ね「由緒記」なるものがあれば頂きたかったのですが、あいにく社務所に声をかけても返事はありません。仕方なく、お参りに来ていたご近所の方に声をかけ、この神社について尋ねてみました。
その方(神社の目の前の家に住んでいらっしゃる女性)は、私がまだ若かったせいか、このようなことに興味があることをとても感心してくださいました。そしてもう一度一緒に社務所を訪ね、留守と分かると氏子の方を紹介しようか?と、おっしゃってくださいました。しかし、まだ9時前。みなさん、お忙しい時間帯では?と思い遠慮しました。そのお気持ちだけでも嬉しかったですし。

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揖屋神社本殿。しめ縄がとても立派!やはり、それなりの歴史を持つ神社だけあります。

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本殿にある鏡。これとて、太古の昔から今に伝わる貴重な鏡だと思います。

その女性は、「せっかく遠く(名古屋)から来ているのに…」と、神社内を色々案内してくださいました。そして、この神社の由緒が書かれた石碑へと案内し、この神社に祀られている神様のことを説明してくれました。それによると、この神社のご祭神は「伊邪那美命(イザナミノミコト)・大穴牟遅神(オオナムヂノミコト)・事代主命(コトシロヌシノミコト)・少名毘古那神(スクナヒコナノカミ)」の四柱の神様です。
ところがこの女性、伊邪那美命・事代主命・少名毘古那神はご存じだったのですが、「大穴牟遅神様という神様は知らないのですよ」とおっしゃいました。そこで私が「大穴牟遅神様は、大国主神様のことですよ。大国様は・・・」と話すと、その方は本当に感心し、「目の前に住んでいるのに知らなかった」ことを恥ずかしがっていました。

私が仕事で名古屋から走って来て、まだ朝食をとっていないと知ったその方は、「ちょっと待ってて」と言い、自宅へ戻り、しばらく待っていると、「おにぎり」を作って私に持たせてくださいました。私は恐縮しながらも、せっかくのご厚意に甘えることにしました。そしてさらに、その方から伺った話で、「黄泉比良坂・伊賦夜坂」も訪れました。

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この坂の奥は、どうなっているのでしょうか?私はまだ死にたくなかったので、足を踏み入れることができませんでした。

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コメント

私はこの話の後で、ギリシャ神話のオルフェウスを読んであまりの共通点にびっくりしました。のぞいた、振り返った状況は違ってもひとたび黄泉の国へ旅立ったものは美しいまま旅立たせてむげに後を追うことはかえって残酷なのでしょうか。その禁を犯したばかりに美しい、いとしい妻を冒涜してしまったような気がします。その発想がパルテノン神殿と法隆寺のエンタシスの柱のように、ギリシャと日本でどうつながったのでしょうか。歴史のロマンです。


hannaさんへ

ギリシャ神話のオルフェウスというと、たしか、亡くなった妻(ユウリディケだったかな?)をあの世へ迎えに行き、「地上に着くまでは決して振り返ってはならない(妻の姿を見てはならない)」との約束を破って振り返ったがために、妻を取り戻すことができなかった、という話でしたよね(違ったかなー?うろ覚えです)。ギリシャ神話や北欧神話も読んだことがありますが、すっかり忘れかけています。
はるか古の時代にはるかに離れた日本とギリシャ、書かれた物語に共通点が見られるのは興味深いですネ。シルクロードの貿易商たちから隋の国に伝えられ、遣隋使たちによって日本へも伝えられたのかな?
「古事記」は「古事記」であり、日本人の伝聞だけで書かれたものだと私は思っていますが。ただ、「古事記」の後半(伝承編)になっても、「卑弥呼」の話が全く出てないのが、とても不思議です。

投稿: hanna | 2009年10月12日 (月) 22時50分

今日友達と神話の神様の話になったのですが、そういえばジンさんが神話を書いてたな~ 
と思い、今またじっくり読んでましたwink
ところでこの上から2枚目の写真の光っているものはなんなんですか? 
神社に電球がぶら下がってる?(・_・)エッ....? 下の方も光ってる・・?
何か写ってないか写真をマジマジと見るクセがあるので~・・・すんませんo(*^▽^*)o


ウンディーネさんへ

古い記事へのご訪問、ありがとうデース (^_^)/!古事記ゆかりの地とはいえ、黄泉の国やその境目と云われる黄泉比良坂の伝承地ですから、ウンディーネさんなら興味があって当たり前ですヨー (^_^)!
やや逆光気味で撮った写真なのですが、ま・まさかこれもオーブとか・・・?私はただ単に、逆光のせいだとばかり思っていましたが・・・。どちらでしょうか?例(霊?)の友達に訊いてみてくださいな。他にも、何か気付いた写真がありましたら、教えてくださーい m(。。)mヨロシク!

投稿: ウンディーネ | 2010年4月 1日 (木) 03時27分

じつは、写真を携帯に取り込んで勝手に友達に送ってみてもらっちゃいました。 ごめんなさい
そしたらね・・・
びっくりしちゃったんですけど・・∑ヾ( ̄0 ̄;ノ

てか本当に電球ぶら下がってませんでした?笑
逆光ではたしてこんなんなるんでしょうか???


ウンディーネさんへ

アレレッ?昨夜は↑のコメレス書いた後、寝てしまったので気付かなかった・・・(^_^;;!(。_。)ゴメンヨー!
で!何と言っていましたかー?びっくりした、というぐらいですからねー、気になる・・・(-_-)ムムム!
電球があったかどうかは、覚えていないのですよ。でも、電球のように見えるところには、たぶんなかったんじゃないかな―。だって、あの場所にあっても不自然でしょ?
逆光で撮影した場合、例えば日の出や夕陽が沈むところの写真を撮った場合、太陽を見た後の残像のような光が写っていることはありましたよ。カメラの種類やシャッタースピードにもよるでしょうが。だからこの写真も、そう思っていたのですが・・・。でも場所が場所だからな―?もしかして…、お祀りされてる神様たちが、このような形で姿を現した・・・?

投稿: ウンディーネ | 2010年4月 2日 (金) 00時05分

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