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2009年2月13日 (金)

エヴェレスト街道を行く 最終回

その後、仲間たちは・・・

カラ・パタール登頂後、ゴラクシェプへと戻る。
T 夫妻は明日、エヴェレスト・ベース・キャンプへ行くため、この日はゴラクシェプで泊まる。
俺と I さんは、荷物をロブチェに置いたままなので、ロブチェへと戻る。
したがって、T 夫妻とはここでお別れとなった。

高山病の症状がかなり出ている俺は、エヴェレスト・ベース・キャンプは諦めざるを得なかった。
I さんは翌日、再びゴラクシェプへ、そしてベース・キャンプへと向かった。
しかし俺は、早急に下山するしかなかった。

とうとう仲間たちとバラバラになってしまった。

更に辛かったのは、ジリまで歩くつもりだったのだが、体調面を考えて、ルクラから飛行機でカトマンドゥへ戻らざるを得なくなったことだ。
カリコーラの笑顔が素敵な少女・ヤンジーに、折り鶴を渡したかったのだが・・・。

カラ・パタールに登頂し、エヴェレストを間近で眺めた日から6日後、俺はカトマンドゥに戻って来た。
3月25日、くしくも俺の30才の誕生日である。

ゲストハウスの従業員にそう話すと、バースデーカードやちょっとしたプレゼント、ビールなどをいただいた。
更に、街へ出てみると、ガイドと共に歩いていた一人旅のフランス人男性と再会、そのうえ、なんと T 夫妻とも再会したのだ。彼らもこの日、ルクラから戻って来たという。俺の顔を見るなり A さんは、
「Happy Birthday dsching ! 」
と、言ってくれた。トレッキング中に話していたから、覚えてくれていたようだ。

俺はしばらくの間、トレッキングの疲れを癒し、そしてインド・ダージリンへも足を伸ばし、再びカトマンドゥへ戻って来た。

そして、次なる予定、アンナプルナ周遊トレッキングの準備・情報収集をしていたある日、カトマンドゥの街なかで突然「dsching ! 」と声かけられた。
声のする方を見ると・・・ I さんだ!思いがけぬ再会に俺たちは、とびっきりの笑顔で喜びを分かち合った。いや、それだけではない。その1時間後、もう一度会う約束をした。

ロード・ハウス・カフェという喫茶店で、彼女と待ち合わせ、トレッキング中に撮った写真をプレゼントした。そして彼女はその後のトレッキングのことを話してくれた。
俺と別れた後、エヴェレスト・ベース・キャンプへ行き、ナムチェまで下った後、サブコースであるゴーキョへも行ったそうだ。そして帰路もジリまで歩き通したと言う。ほぼ1ヶ月に及ぶトレッキングだ!かなわないワ!


この旅が終わって帰国した後、カリコーラのヤンジーやドイツの T 夫妻に写真と共に手紙を送った。I さんにも帰国した知らせを書いた。

ヤンジーから返事が届いた。しばらくの間、俺はヤンジーと手紙で連絡を取り合い、2年後に再会した。その時のヤンジーは、初めて会った時以上の笑顔で俺との再会を喜んでくれた。

T 夫妻とも、手紙、やがてEメールでずっと連絡を取り合い、10年後の2002年にドイツにて再会を果たした。彼らの自宅へ泊めていただき、すぐ隣に住んでいる E 氏のご両親、さらに車で10~15分ほどの A さんの実家へも行き、みんなに大いに歓迎していただいた。

2004年にもドイツを訪れ、彼らの自宅で1週間ほどホームスティさせていただいた。さらに翌年、彼らとの約束通り、俺は母を伴って三たびドイツを訪れた。当時73才の母にとって、これが初めての海外旅行!彼らはもちろん、彼らのご両親たちも、高齢ながらドイツまで来てくれた母を、最上の笑顔と共に大歓迎してくれた。
母にとってこの旅は「最初で最後の海外旅行」になるかもしれない。いずれにしても、お互いに「家族ぐるみのお付き合い」ができるようになった。

そして I さんは・・・、その後の消息は全く分かりません。T 夫妻のところへも何の返事もないそうだ。あの後、何かあったのだろうか?今頃、元気に過ごしているのだろうか?


30回にわたり「エヴェレスト街道を行く」を、書き綴りました。
俺にとっては、貴重な経験であり、財産でもあります。
とくに、ドイツの T 夫妻とは今でもコンタクトを取っていますし、いつでも出迎えてくれる海外の友達ができたことは、この上ない喜びです。

今回のこのトレッキングで、俺は多くのことを学びました。

言葉(英語)ができなくても、積極的に話しかけること。
人を思いやる心を持つこと。
苦しい時はお互いに助け合い、励まし合って頑張り、生きていくこと。

などなど、この時の経験が今の俺の人格を作ったと言っても過言ではないでしょう。

本当に仲間に恵まれた素晴らしい旅、トレッキングでした。

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コメント

標高5,000m超、日本では体験出来ない高さです。山の高さが全てではないと日々思っていますが、今回で一番の収穫はトレッキングを通じてお仲間が出来たことでしょう。それは現実に今も交信が続いておられ、忘れえぬ一ページとなっていることでしょう。
いつの日か、金とヒマが出来たら海外トレッキングに行きたいです~まずは右膝を治して国内の冬山に出かけたいですけどね~


青龍○段さんへ

まったく、おっしゃる通りかもしれません。エヴェレストを間近に眺めることができた感動は、今も忘れられません。しかし、それ以上に、今もなお交流が続いているドイツ人の T 夫妻との出会いは、私の人生での宝物です。ネット上のバーチャル世界でも、このような出会いがあるといいのですが…。
海外トレッキング、ぜひいつか、行ってみてください。忘れえぬ思い出ができると思います。
ところで、右膝の具合はいかがですか?

投稿: 青龍○段 | 2009年2月13日 (金) 21時45分

素敵なお友達ができてよかったですね。外国人の方の中には、かなり近しい感じでお付き合いをしても、その後は梨の礫みたいな人もいます。でも、忘れているわけではないのだと思います。私も、割りとそういうタイプかも。何というかさぱりしているんですよね。それでも、心の中にはきっと懐かしい思い出として残っているのだと思います。本当に素晴らしい経験をなさいましたね。


hannaさんへ

今回の旅日記も、欠かさずお読みいただき、ずっとコメントしていただき、感謝の述べようがありません。本当にありがとうございました。
ドイツ人の T 夫妻とは、今も交流が続いています。今ではかけがえのない存在です。
近代史のなかでも、日本とドイツはとても近い存在でしたし、国民性においても、似たところがあるように思えますし。
いずれにしても、私の人生の中で、5本の指に入るほどの素晴らしい体験だったことだけは、間違いなさそうです。

投稿: hanna | 2009年2月13日 (金) 23時14分

こんにちは。
ヒマラヤトレッキングには劣りますが、お体の具合と相談され低山に行かれてはいかがでしょうか?日々鍛えておられるので荷を軽くすれば大丈夫では!?富士山トレッキングでしたら時期合えばお付き合いいたしますよ~。もちろんヘビーな酒は私が持ちますけどね。


青龍○段さんへ

春になったら…、鈴鹿山脈の山々を久しぶりに登ってみようかな?
古いけど、山の地図なら今も本棚にあることですし・・・!
足だけは衰えぬよう、日々鍛錬しております。問題は、肩の痛みが荷物を背負うのに耐えられるか・・・?ですわ!右手の全指も痺れたままですし、食事の際、箸を使うことも困難なこともありますので・・・。

投稿: 青龍○段 | 2009年2月14日 (土) 17時18分

エヴェレスト街道は出会いと友情の旅でしたね。
自ら飛び込んで行ってこそ、生涯の友を得ることもできるんですね。友情が深まっていく様子、毎晩の和気藹藹の集い、読みながら、つい頬が緩むお話ばかりでした。
実は鉱物が好きで、ヒマラヤ水晶と呼ばれるものの産地を調べたことがあります。カトマンドゥに近いガネッシュヒマールとカンチェンジュンガです。村人がドッコを背負って山に登り手作業で掘ってくるのだとか。こちらのお話のシェルパ族のこと、また沢山の険しい山道の写真も、とても興味深く拝見いたしました。
それにしても、慕辺未行さんのお人柄がこんなにも素敵な方たちを吸い寄せているように思われます。「ドイツ・スイスの旅」連載の前に、もう少しネパールのお話を読んでみますね。
すばらしい友情とトレッキング達成の感動をありがとうございました。


hare様

こちらの旅日記も早々とお読みいただき、本当にありがとうございます。
このトレッキングに出発する前、カトマンドゥで滞在したゲストハウスでスタッフのネパール人をはじめ陽気なジャマイカンたちと親しくなって、そのせいかほかの国のツーリストたちとも自然と声かけることができるようになりました。
あの辺りはいろいろな鉱石が採れるようで、それらを使ったアクセサリーがお土産としても人気です。
ガネッシュヒマールやカンチェンジュンガ辺りにもトレッキングできるコースはあるようですが、訪れる人は少ないと思います。
カンチェンジュンガは紅茶で有名なインド・ダージリンから見えます。
ドッコという言葉、よくご存知ですね。トレッキング中に、村人がドッコに燃料用の薪をたくさん積んでいる姿、何度も目にします。
ここでは登場人物はイニシャルにしてありましたが、再掲載時は名前を出しました。
来週から『ドイツ・スイスの旅』を再掲載します。
ドイツ人のT夫妻(EさんとAさん)と再会です。そちらもぜひ楽しみにしていてください。

投稿: hare | 2014年2月21日 (金) 15時05分

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